復習問題 2026-10-10
5問、計算なしです。昨日で 送信ドメイン認証の3語(SPF・DKIM・DMARC) と 証明書の4段(鍵の向き→署名→失効→チェーン) が揃いました。今日は両方の「次の1段」です。第1問はメールの最後の1語 S/MIME、第2問は積み上げた証明書を実際に使う場面(TLS)。第3問は昨日の稼働率の隣、第4問は枠組みシリーズ6つ目、第5問は下請法の隣です。
第1問 S/MIME(情報セキュリティ)
電子メールのセキュリティ技術のうち、S/MIME の説明として適切なものはどれか。
- 送信元メールサーバの IP アドレスを DNS に登録し、受信側がそれと照合して送信元ドメインの正当性を検証する。
- メール本文とヘッダの一部に送信側ドメインの秘密鍵で電子署名を付け、受信側が DNS 上の公開鍵で検証する。
- メールの本文と添付ファイルを、利用者個人の証明書を用いて暗号化・電子署名し、本文そのものの秘匿性と作成者の真正性を確保する。
- SPF・DKIM の検証結果が不合格だったメールの取扱い方針(何もしない/隔離/拒否)をドメイン所有者が宣言する。
解答
答え:c
S/MIME は メールそのもの(本文・添付)を守る 技術です。利用者個人に発行された証明書(=鍵ペア)を使い、受信者の公開鍵で暗号化し、自分の秘密鍵で署名します。守る対象が「本文の中身」であるところが、他の3つと決定的に違います。
a は SPF、b は DKIM、d は DMARC で、いずれも送信ドメイン認証です。こちらは本文を暗号化しません。守っているのは「このドメインから出たと名乗ってよい相手か」という差出人の正当性だけです。
| 技術 | 守るもの | 鍵・情報の持ち主 |
|---|---|---|
| SPF | 送信元ドメインの正当性(IP で) | ドメイン(DNS に IP) |
| DKIM | 送信元ドメインの正当性(署名で) | ドメイン(DNS に公開鍵) |
| DMARC | SPF/DKIM 失敗時の処理方針 | ドメイン(DNS にポリシー) |
| S/MIME | 本文の秘匿性+作成者の真正性 | 個人(個人の証明書) |
切り分けの一言:DNS に置くものは全部ドメイン認証、個人の証明書を使うものが S/MIME。これで4つが2対2に割れます。8/22 に「SPF / DKIM / DMARC / S/MIME の役割分担を整理したい」と書いた4語は、これで全部埋まりました。
第2問 TLS における鍵の受け渡し(情報セキュリティ)
HTTPS(TLS)の通信で、公開鍵暗号と共通鍵暗号を組み合わせて使う理由として最も適切なものはどれか。
- 共通鍵暗号は公開鍵暗号より解読されにくいが鍵が長くなるため、鍵の配送だけを公開鍵暗号で短縮している。
- 公開鍵暗号は処理が重いため本文の暗号化には向かず、本文を暗号化する共通鍵を安全に相手へ渡す部分にだけ使っている。
- 公開鍵暗号では送信者を特定できないため、共通鍵暗号を併用して送信者を認証している。
- 共通鍵暗号だけでは通信の改ざんを検知できないため、本文全体を公開鍵暗号で二重に暗号化している。
解答
答え:b
これがハイブリッド暗号方式です。役割分担はこうなっています。
- 公開鍵暗号(重いが、事前に鍵を共有しなくてよい)→ 共通鍵(セッション鍵)を渡す場面だけに使う
- 共通鍵暗号(軽いが、鍵を事前に共有する必要がある)→ 本文の暗号化に使う
お互いの弱点をちょうど打ち消す組み合わせなので、「鍵配送に公開鍵、本文に共通鍵」とそのまま覚えて構いません。
ここで 10/6 からの4段がつながります。サーバ証明書(10/7・10/9 のチェーンで信頼を辿り、10/8 の失効確認で有効性を確かめたもの)に入っているサーバの公開鍵が、まさにこのセッション鍵を渡すための鍵です。証明書は、鍵の持ち主が本当にそのサーバだと保証するためにあった——という着地になります。
a は性能と強度の説明が逆。c は公開鍵暗号(+証明書)こそが送信者の認証手段なので逆です。d は改ざん検知の手段はハッシュ(MAC・署名)で、二重暗号化ではありません。
第3問 バックアップ方式(サービスマネジメント)
毎週日曜にフルバックアップを取得し、月曜から土曜までは増分バックアップ(インクリメンタルバックアップ)を取得している。水曜日の業務終了後に障害が発生し、データを復旧する場合に必要となるバックアップの組合せはどれか。
- 水曜の増分バックアップだけ
- 日曜のフルバックアップと水曜の増分バックアップ
- 日曜のフルバックアップと、月曜・火曜・水曜の増分バックアップ
- 月曜・火曜・水曜の増分バックアップだけ
解答
答え:c
増分と差分の違いがそのまま答えになります。
| 方式 | 何を保存するか | 取得の速さ | 復旧に必要なもの |
|---|---|---|---|
| 増分(インクリメンタル) | 前回のバックアップ以降の変更分 | 速い(量が少ない) | フル+間の全部 |
| 差分(ディファレンシャル) | 前回のフルバックアップ以降の変更分 | 遅くなっていく | フル+直近1本 |
増分は「毎日ちょっとずつ」なので、1本でも欠けると鎖が切れます。差分なら b の形(フル+水曜の1本)で済みます。
覚え方:増分は取るのが楽で戻すのが大変、差分は取るのが大変で戻すのが楽。トレードオフが逆向きだと分かっていれば、どちらを問われても答えられます。昨日の稼働率(MTBF / MTTR)が「止まる時間をどう測るか」なら、こちらは「止まった後どう戻すか」です。
第4問 バリューチェーン分析(ストラテジ)
バリューチェーン分析の説明として適切なものはどれか。
- 業界の競争要因を、既存企業間の敵対関係・新規参入の脅威・代替品の脅威・買い手と売り手の交渉力の5つに分けて分析する。
- 企業の活動を購買物流・製造・出荷物流・販売/マーケティング・サービスといった主活動と、人事や技術開発などの支援活動に分け、どこで付加価値が生まれているかを分析する。
- 市場成長率と相対的市場シェアの2軸で事業を4つに分類し、資源配分の優先順位を決める。
- 財務・顧客・業務プロセス・学習と成長の4つの視点から業績評価指標を設定する。
解答
答え:b
バリューチェーン(価値連鎖)は、社内を工程ごとに切って「どの工程が価値を生み、どこがコストを食っているか」を見る枠組みです。他の4つが業界や事業の見方であるのに対し、これだけが自社の中を見ます。これが見分けの決め手です。
a はファイブフォース(昨日)、c は PPM(10/6)、d は BSC(10/7)です。枠組みシリーズ6枚目なので、見分け表を更新しておきます。
| 枠組み | 軸・切り口 | 見ている対象 |
|---|---|---|
| SWOT | 内部/外部 × 強み/弱み | 自社の置かれた状況 |
| PPM | 市場成長率 × 市場シェア | 事業の組合せ(資源配分) |
| BSC | 財務・顧客・プロセス・学習 | 業績評価指標 |
| アンゾフ | 製品(既存/新規)× 市場(既存/新規) | 成長の方向 |
| ファイブフォース | 5つの競争要因 | 業界の構造 |
| バリューチェーン | 主活動/支援活動 | 自社の工程 |
一言で:5つの力は外、価値連鎖は中。この2つは並べて出題されることが多いので、セットで覚えると得です。
第5問 プログラムの著作権(法務)
A 社が B 社にシステム開発を請負契約で委託した。契約書に著作権の帰属に関する取決めがない場合、開発されたプログラムの著作権は原則として誰に帰属するか。
- 委託者である A 社
- 受託者である B 社
- A 社と B 社の共有
- 実際にコードを書いた B 社の従業員個人
解答
答え:b
著作権は創作した側に発生します。請負契約で代金を払ったのは A 社ですが、作ったのは B 社なので、取決めがなければ著作権は 受託者の B 社のものです。「お金を出したほうに権利が来る」という直感と逆になる、頻出のひっかけです。
d を選びたくなりますが、会社の業務として従業員が職務上作成したプログラムの著作権は、原則としてその法人(B 社)に帰属します(職務著作)。だから従業員個人ではなく B 社です。
c は、A 社の社員が設計や仕様策定に実質的に関与して共同で創作した場合になり得るだけで、原則ではありません。
実務での対処は決まっていて、契約書に「著作権は委託者に譲渡する」と書く——これが無いと後で揉めるので、A 社側の立場なら必ず入れます。試験では「取決めがない場合」という条件が付いたら受託者、と即答して構いません。
法務シリーズの線引きも揃いました。請負/準委任は仕事の渡し方(10/7)、偽装請負は人の使い方(10/8)、下請法はお金の払い方(10/9)、著作権は成果物の持ち主(今日)。同じ1本の契約について、問われている面が違うだけです。